●コロンビア大氷原とアサバスカ氷河
最終のスノーコーチ・ツアーに間に合った私たちは、アイスフィールド・センターの横で、シャトルバスを待っていた。このバスで、氷河の近くまで行き、途中でスノーコーチに乗り換えて、氷河の上まで行くのである。午後5時になろうとしているのに、太陽はまだギラギラ輝いていてまぶしいくらいだ。氷河の上に行ったら、サングラスが必要になるだろう。
ところで、氷河(glacier)と氷原(ice field)は、何がどう違うか、ご存じだろうか?
実は私も、いちばん最初に来た時は分からなかった。なんでスノーコーチ・ツアーは「氷河」の上に行くのに、「コロンビア大氷原」って言うの?と思っていた。
氷原とは山の頂上などに堆積している氷の原っぱであり、氷河はそこから流れ出している氷の川である。すごく大ざっぱに言ってしまえば、氷原は動かずにそこにあるが、氷河は動いて(流れて)いる。
で、スノーコーチで行くのは、コロンビア大氷原から流れ出しているアサバスカ氷河の上である。コロンビア大氷原は遠すぎて(標高が高過ぎて)、スノーコーチではそこまで行けないのだ。
コロンビア大氷原の総面積は325平方kmで、北極圏の南にある氷河としては、世界最大の容積量を誇っている。そこから8本の氷河が流れ出しており、その1本がアサバスカ氷河というわけだ。
以前、スノーコーチのドライバーから受けたユニークな説明はこうだった。
「王冠をテーブルの上に置いて、そこに生クリームを注いでいくと、王冠のトンガリの間から、クリームがあふれて流れ出す。その流れ出した部分が氷河で、王冠の上にたまっている部分が氷原です」と。なるほどね。
8本の氷河からは、さらに何本かの川が流れ出し、太平洋、大西洋、北極海の3大海に流れ込んでいる。北米広しと言えども、このような大分水嶺はこのコロンビア大氷原だけだ。
観光地としての名前は「コロンビア大氷原」なのだが、実は、ふもとからは、コロンビア大氷原はほんのちょっとしか見えない。だから、まぎらわしいのよね。最初から「アサバスカ氷河」という観光地名にすればよかったのに…(ちょっと弱いか)。
おそらくヘリツアーか何かで、上空からコロンビア大氷原を眺めたら、氷原の大きさと流れ出している氷河の形態が、すごくよく分かるのだと思う。それこそ、王冠と生クリームのように見えるかもしれない。
スノーコーチ・ツアーの最後に、日本語でかかれたコロンビア大氷原のリーフレットがもらえる。その中から、コロンビア大氷原とアサバスカ氷河のデータをご紹介しよう。
<コロンビア大氷原>
種類 :氷原
総面積 :325平方km
最高標高点 :マウント・コロンビア 3745m
平均標高 :3000m
最深度(推測):365m
年間平均降雪量:7m
流出先 :太平洋、大西洋、北極海
<アサバスカ氷河>
種類 :渓谷流出型氷河
総面積 :6平方km
全長 :6km
氷の厚さ :90〜300m
表面の流動速度:氷ばく(氷河の上部にある崩落している部分)
年間125m
転回地点 年間25m
先端 年間15m
標高 :氷ばく 2700m
スノーコーチ折り返し地点 2210m
先端 1965m