●モレーン・レイク
レイク・ルイーズのあとは、私の大好きなモレーン・レイクに行く。カナディアン・ロッキーの湖はみんな好きだが、強いて順位を付けるとしたら、私はモレーン・レイクがいちばん好き。2位はマリーン・レイク、3位はペイトー・レイクかな。
モレーン・レイクは、レイク・ルイーズから車で20分ほど奥に行ったところにある。レイク・ルイーズほどツアーバスが入って来ないので、まだまだ静かな感じを残している。それでも、数年前に駐車場が整備される以前よりは、観光客が格段に増えた。
私が初めて訪れた頃は、湖よりかなり下に駐車場があり、10分ほど道を上らないと湖畔にはたどりつけなかった。そこまで上って初めて、あの素晴しい景色を目の前にすることができたのだ。ところが、'97年に取材に行った時には、もう駐車場から湖が見えていた。さらに、その横に大きなログキャビンのお土産屋もできていたのだ。
実は私、この新駐車場を見た時、ああこれでモレーン・レイクにもばんばん大型バスが入り荒れてしまうと、がっかりしたのだが、それはとんでもない考えだった。この位置に駐車場ができたことで、お年寄りや車椅子の人でも、楽に湖畔に来られるようになったのだ。まったく人間とは自己中心的なものだと、いたく反省。ロッキーがもたらしてくれる大自然の景観は、みんなで楽しませてもらうべきものなのだ。
レイク・ルイーズが女性的でエレガントな感じの湖なら、モレーン・レイクは男性的で勇壮な感じ。周囲をテン・ピークスと呼ばれる10の峰で囲まれ、氷河の堆積物(モレーン)の特徴である深い青色をしている。旧20ドル紙幣の裏側には、モレーン・レイクの絵が描かれているが、最近は入手しにくくなっているので、ツアーガイドさんは説明する時のために、必ず1枚はお財布の中にキープしておくらしい。
私たちはその風景を正面にする丘の上のベンチに座り、しばしぼーっと眺めていた。
今回行って驚いたのは、湖水が通常の半分しかなく、メディスン・レイク状態になっていたことだ。こんなモレーン・レイクは初めて見た。せっかくだから、普段は湖底になっているところまで下りてみる。ぬかるんでいるわけでもないので、水がひいてからけっこう時間がたっているのかもしれない。ロッキーでは、6月はちょうど雪が溶け始める頃。だから、これから雪解け水が流れ込み、水位があがってくるのだろう。
湖底から見るテン・ピークスは、いつもより鋭くそびえ立ち、迫ってくるような迫力があった。
●レイク・ルイーズのゴンドラ
この後、私はもう一つ念願だった場所を訪れた。それはレイク・ルイーズのゴンドラである。
むかしむかし『エイビーロード』の編集をしていた時に、レイク・ルイーズのたいへん美しい全景写真を見た。空撮ではないのだが、湖とシャトー・レイク・ルイーズと周囲の山々が、見事に1枚の写真の中に納まっている。レイク・ルイーズといえば、正面写真が多かったので、私はいつかこの場所から湖の全景を見てみたいと思っていたのだ。
ゴンドラ乗り場は、ヴィレッジからトランス・カナダ・ハイウェイをはさんで反対側にある。大きなログ・ハウスになっていて、中にはレストランやショップが入っており、宿泊施設もあるようだ。ゴンドラのチケットを買いに行ったら、Ride and Lunch というランチ・ビュッフェとのセットがあったので、そこで昼食をとることにした。もう2時近くなのに、何も食べていなかったので、2人とも腹ペコだ。ビュッフェ(いわゆるバイキング)の内容はなかなかよく、これでゴンドラ代も入ってC$19.95はお得だった。
腹ごしらえもすんで、いよいよ頂上へ。ゴンドラが上るにつれ、向こうの森の中に、だんだんレイク・ルイーズが見えてくるのは感動的だった。
頂上からの眺めは、想像していたより数段素晴しかった。レイク・ルイーズと湖畔のシャトー・レイク・ルイーズが、深い針葉樹のグリーンの中で、本当に宝石のように輝いていた。かつてこの位置から、初めて湖の眺望を発見した人は(先住民か、毛皮商人か、はたまたスイス人ガイドか)、きっと感嘆の声を上げたに違いない。
もしロッキーをレンタカーでまわるなら、このゴンドラにはぜひ立ち寄ってほしい。ズームレンズ付きのカメラも忘れずに…。