●スリー・シスターズ
バンフを出てしばらく行くと、右側に3つの峰が連なる山が見えてくる。この山の名前は「スリー・シスターズ」、3姉妹というのだ。
我が家は3姉妹なので、両親と旅行した時、この山のことを話した。その時、母はバスの中から写真を撮っていたらしい。翌年、帰国した私に、感慨深そうに見せてくれた写真は、不思議な構図だった。普通に座席から撮った写真には、バスの内部と窓から見えるスリー・シスターズが写っていたのだが、車内のバックミラーに父の顔が写っているのだ。母の席からは、ちょうど父がミラーに写る角度だったのだが、もちろんそんなことはプリントが仕上がるまで全然気付かなかったという。しかも、前方の窓を撮っているので、父以外の乗客の顔は一人も写っていない。
母は「3姉妹の山を撮った写真に、お父さんが写っているんだよ」としか言わなかったが、その写真を見ると、娘たちを見守っている父の姿としか思えなかった。母も内心はそう思っていただろう。うちはあんまりベッタリした親子ではないのだが、そういう情は、黙っていても感じられるものだ。
3人3様、それぞれ自立心の強い姉妹なので、なかなか親の思う通りにならず、父はハラハライライラしながら見守ってきたことと思う。たぶん途中で、もう言うことを聞かそうとするのはあきらめただろうが、この写真を見ると、それでも最後まで見守ってくれたのだなと感じる。
この写真を見てから2カ月足らずのうちに、父は亡くなった。
余談だが、「スリー・ブラザーズ」という三連山も、アメリカのヨセミテ国立公園にある。
●ロッキー山脈から大平原へ
カルガリーからバンフに向かう時、あるいはその逆の場合でも、カナディアン・ロッキー周辺の地形が非常によく分かるので、疲れていてもなるべく寝ないで、目をこらして見ていてほしい。
カナディアン・ロッキーは、平原の上に突然ドーンと立っているような山脈である。バンフからカルガリーに向かう時は、そろそろ山地から出てきたかなと思うと、急に視界がパアーッと開け、あとはひたすら平原になる。周囲には牧場が広がり、馬や牛、ロール状になった牧草が見られる。バンフからわずか1時間ほどでこの変化。あんまり感傷にひたっている暇はない。うしろを振り返ると、平らな大地の上にポンと置かれたような山脈が、みるみる遠ざかっていく。
ここから先は、当分高い山にはお目にかかれない。
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★昨日7月1日はカナダ・デー(建国記念日)でした。私たちは昼間、サイプレスという山へ友人らとハイキングに行き、山道を5時間歩いて帰った後、夜はダウンタウンのカナダ・プレイスへ、恒例の花火を見に行きました。まだバスがストなので往復2時間歩き、もうへとへと。昨夜からもう筋肉痛が出始め、今日は朝から歩き方がおかしく、立ち上がるたびに「アイテッテッテ…」とか言ってる始末。恥ずかし〜〜〜
★夏のサイプレスには初めて行きましたが(冬はスキー場になる)、まだ上のほうに雪が残っている場所がけっこうあって、ちょっとびっくり。
ランチを食べている所に、レイヴァン(大ガラス)の親子が4羽やってきました。レイヴァンは、BC州の先住民の伝説によく出てくる鳥で、トーテムポールなどの彫刻のモチーフとしてもよく使われています。が、間近で見るのは初めて。これまたびっくり。デカイ。本当にデカイ。羽を広げるとまたデカイ。銀座のカラスの2倍はありそう。こんなのに突つかれたら、たまんないな。
でも、なんか納得。先住民の人たちは、この堂々たる大きさと漆黒の美しさに、畏敬の念を抱いていたのでしょうね。
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