●ペードラ歴10ン年の私、ロッキーを運転す
コロンビア大氷原を後にした時は、もう既に夕方7時近くになっていた。でも、まだすごく明るい。
あとはひたすらアイスフィールド・パークウェイを走り続け、時々ビューポイントを見つけては、写真を撮るために止まった。半分仕事用とはいえ、私の写真撮影点数はかなりのものである。
8時過ぎに、サスカチュワン・クロッシングというドライブインに着いた。ここはアイスフィールド・パークウェイの中でも、かなり大きいドライブインで、レストラン、お土産屋、宿泊施設、ガソリンスタンドがある。私たちは、ここで夕食を仕入れた。レイク・ルイーズまでは、まだ遠い。
サスカチュワン・クロッシングのお土産屋で、初めてピンバッジを買った。もともとカナダのお土産は買う必要がない私たち。でも、行く先々でお土産屋があると、やはり何か記念品を買いたくなる。ピンバッジは、安いし小さいし、こういう時の記念の品としてはピッタリである。
以降、私たちは、最後のニューファンドランド州に至るまで、必ず訪問先で、その州のバッジと都市あるいは観光名所のバッジを買い、リュックに付けていった。増えていくのが実に楽しみなコレクションだった。
サスカチュワン・クロッシングを出発。さっきから、私も運転しないかということになっている。一応、セカンド・ドライバーとして登録してあるのだ。
しかしなあ・・・、ブランクが10年以上だよ、10年以上。日本にいた時から、ずーっとペーパードライバーなのだ。
でも、ロッキーの中で運転するのは、長年の夢だったし、もうこの時間だと車はほとんどない。それでもまだ明るいので、運転するならチャンスなのだ。意を決してトライすることにした。
まずパーキングでレクチャーを受ける。オートマを運転するのもほとんど初めてだし(数少ない運転経験では、いつもマニュアルを使っていた)、とにかくもうすべて忘れているのだ。教わりながら、そろそろと道路へ出た。
ハイウェイを走ってみると、なーんだ、意外にカンタンじゃない。やっぱ、オートマは楽だね。
しばらくすると慣れてきて、緊張はしてるけど、面白くなってきた。免許をとったばかりなのに、車でカナダを横断したがったシュテファンの気持ちがよく分かる。まあ、ここは道路まっすぐだし、信号ないし、車は少ないし、だから私でも運転できるのだけど、バンクーバーの街中だったら、まだ難しいだろうな。
私たちが借りた車には、クルーズ・コントロールという機能が付いていて、速度を設定すると、あとは手元のボタン一つで、一定の速度に保つことができる。早い話が、道がまっすぐな所では、親指一本で運転できてしまうのだ。すごいね。ちまちまマニュアルを運転している時代じゃないんだ。
私も時々この機能を使いながら、快適にアイスフィールド・パークウェイをとばしていた。いつかこのハイウェイを、自分で運転して走ってみたいと思った時から、いったい何年が過ぎたのだろう。こんな些細なことだけど、人間、ずっと思い続けていれば、いつかはかなうものだと思ってしまった。