●交通バリアフリー法
今年の5月、日本で交通バリアフリー法が成立した。
「鉄道の駅にエレベーターを設けたり周辺の歩道を整備したりして、お年寄りや体の不自由な人が交通機関を使いやすくするための『交通バリアフリー法』が10日、参院本会議で全会一致で可決され、成立した。法律の大部分は11月に施行される。」(朝日新聞インターネット版、5月10日の記事より)
11月から施行ということなので、各地にそろそろそういった動きが見えている頃ではないだろうか。
この法案のニュースに喜んで、例のバイト先の女性(第2・3回参照)にメールを出したら、次のような返事をいただいた。
『ここ最近、日本の駅にも車椅子用のエレベーターやエスカレーターが設置され始めています。最初は「わーい、電車に乗れるー」なんて思ってましたが、エレベーターもエスカレーターも車椅子“専用”で、鍵がかかってたりして、自分で操作できないので、いちいち駅員さんを呼ばなくてはなりません。運良くホームまで人の手を借りずに行けたとしても、ホームと電車の間には人間が落っこちそうな隙間が! 結局、駅員さんのお世話になったりして…。
あと、美術館とか公共施設も同じ。裏の隅っこのほうに、それも関係者以外立ち入り禁止区域に“専用”エレベーターがあったりするのです。「お使いの際には係員にお声をかけてください」なんて親切に言われても、それが気兼ねでおっくうで、もういいやーなんてことになっちゃいます。
その点海外はそういうことが少ないなぁーって思いますね。』
なるほどー、と唸ってしまった。
そう、「設置」するだけでは不充分なのだ。車椅子の人たちが自由に便利に使えるように機能して、初めて本当のバリアフリーなのである。ここには「鍵」とか「関係者以外立ち入り禁止区域」という小さなバリアが、まだ存在している。いちいちお願いするのに気が引けてしまうという彼女の気持ちがよく分かる。使う人の立場に立ってみないと分からないことが、本当にたくさんあるものなのだと痛感した。
とはいえ、この交通バリアフリー法は、記念すべき第一歩だろう。何事も形から入る日本という国。実態は後から修正を重ねながらノロノロ着いてくるにしても、法律という理想を具現化するための形はつくれたのだ。
先週の年表で示したように、バンクーバーで最初の小さな動き---歩道の段差をなくす---があったのは1865年だった。その後は実にゆっくりとした歩みだったが、ここ10年で急激に変化している。日本も10年後に向けて、今スタートをきったのだと思う。
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