●30過ぎて一度断念
エラそうに30代留学をすすめている私だが、実は30歳を過ぎて、一度留学を断念している。
何故か。
30を過ぎたからである。(おいおい)
いや、ほんとに。
やはり30歳というのは(特に女性にとって)大きな通過ポイントだ。自分自身の感覚は20代とあまり変わっていないのだが、まわりは急にうるさくなる。そんな雑音には耳を傾けていないつもりでも、どこかで気にはなっているのである。
とはいっても、30歳の誕生日を迎えたとたんに断念したわけではない。「あ〜、ついに30になってしまったか〜」というような感慨はあったが、それでも「来年くらいには行くぞーっ」と思っていたのである。
ところが、その年齢は、ちょうど仕事がノッている頃。ある程度キャリアを重ねてきて、自分の意見も言えるようになり、自信も少しついてきて、仕事が面白くなってきた頃なのである。
同時に責任も重くなる。
私は当時、海外旅行情報誌の編集者をしていたが、もう一つ、あることを指導するインストラクターもやっていた。両方の仕事での立場と責任、後任問題、それに加えて、海外取材のチャンスも多かったので、楽しくまた超忙しく過ごしているうちに、月日はあっという間に過ぎていった。
気が付けは30ン歳。こりゃ留学はもうダメかなーと、なんとなく思い始めた。
そう思ったワケは、これで1〜2年留学したら帰国後◯歳になってしまうとか、帰ってきてからの仕事をどうするかとか、もうそろそろ留学より結婚も考えんと(別に決まった相手がいた訳ではない)とか、そんなことだった。要するに、一言で言ってしまえば、やはり“年齢”なのである。
けっこう小さい頃から、大人になったら一度海外で暮らしてみたいと思っていた私だが、やはりかなわないんだろうか…と枕をぬらした日もあった。大袈裟なようだが、私の人生はこのまま終わるんだろうか…と思ったりもした。
仕事はますます忙しくなり、がんじがらめ状態だった。
皮肉なことに、記事では語学留学やワーキングホリデーを毎度のように取り上げ、既にフリーランス・ライターとなっていた私は、それらを取材して書く立場だった。
20代の若い人たちをうらやましく思い、自分があと◯歳若かったらと思い、こんなことならあの時(と思えるターニングポイントがいっぱいある)思いきって旅立ってしまえばよかったと思った。
鬱々とした日々が続いた。
そんな時、ある人の思いがけないある言葉が、強力に“背中ポン”をしてくれたのである。
(続く)