●料理は身を助く(1)
先週のエピソードで、料理経験の有無が、ホームステイでも大きな差を招くことはご理解いただけたと思う。
そして、もちろん、一人暮しとなると、この差はさらに広がる。まずスーパーで食品を買うところから、差が出てくるのだ。
自炊の経験がないと、特に野菜などの生鮮食品を選ぶ目が肥えていない。どれが新鮮か、見極める知識と目がないのである。
シュテファンがちょうどいい例で、自炊の経験が浅かった彼が買ってきた物を見ると、ブロッコリーは花が開きかけているし、キューカンバーは端のほうがグニャッとなっている、アボガドは若すぎて青くさく、卵はケースをあけたら1個割れているとか、そんなのが多かった(彼の名誉のために付け加えると、料理が好きになったら目も肥えてきて、今はそんな失敗はほとんどない)。
私が驚いたのは、こちらに来て知り合った日本の20代の女性たちが、あまり料理をした経験がないことだった。これは、自炊生活の有無とはあまり関係ないかもしれない。私自身は、高校生くらいの時から家で時々料理をしていたからだ。仕事をしていた母が、夕飯の支度の最中に呼ばれると、続きを頼まれたりしていたので、見様見真似で覚えてしまったものもある。
しかし、彼女たちは、ごく基本的なことも知らない人が多かった。電気炊飯器がないから普通の鍋でご飯を炊く、なんて芸当はまずできなかっただろう。お米もちゃんととげたかどうか…。
一様に共通してて面白かったのは、「お菓子はつくる」という子が多かったことだ。「ケーキつくったりするのは好きなんですけどぉ」
でも、毎食ケーキってわけにもいかないし…。
料理ができていいことは、まず経済的な食生活ができるということだ。長い間暮らしていると、やっぱり日本食が恋しくなるが、そんな時、毎度のように日本のレストランや居酒屋で外食していると、高くつく。自分でつくるのとでは、そのうちだいぶ開きが出てしまう。
もう一つ、いいことは、自分の健康管理ができること。
料理が好きという人は、必ずバランスも気にかけているものだ。見た目のバランスや彩りのよさ、食材のバランス(肉と野菜、など)、栄養のバランスなどである。料理本を2〜3冊読んでいれば、そして自分で料理をよくつくっていれば、これらのことは嫌でも身についてしまう。
そうすれば、疲れた時や風邪をひきかけた時など、自分で体にいいものをつくれるのである。海外にいると、これは特に大事なことだ。異文化の中で精神面のバランスをとるためにも、栄養バランスのとれた正しい食事は大切である。
ダイエットにも効果的だ。自炊しないで、ほとんど外食をしていた人で、とんでもない体型になってしまった人を、私は何人か知っている。
(あのう…、念のために書いておきますが、正しいことわざは「芸は身を助く」ですよ)