●各ESLの特徴(2)‥‥州立カレッジ系ESL
前の州立大学系ESLで、レベルのばら付きがひどかったので、今度は州立カレッジ系のESLに行くことにした。けっこう人気がある学校で、早めに申し込まないと次のタームまで待たなければならないという噂のESLだった。
ここのシステムは、カレッジに合わせた年3回のターム制で、カレッジ入学を目指す人のためのESLであるため、レベルが厳密に分けられている。ターム中の提出物の成績と最終テスト、最終面接で、次のレベルに進めるかが決まる。最上クラスで同様にパスすれば、次からカレッジに進学でき、カレッジで所定の授業とクレジットを取り、かつ良い成績をおさめていれば、今度は大学に編入できるのだ。編入までに要する期間は、クレジットの取り方により異なるが、早ければ5タームほどで大学3年に編入する人もいた。つまり大学を卒業するまでの年数はほぼ同じになるわけだ。
ただし、これはBC州の場合で、州ごとに教育制度が違うカナダでは、どの州でもこのような編入制度が整っているわけではない。このことは、アルク出版の『カナダ留学事典』に詳しく書かれているので、そちらをご参照いただきたい。
このESLは、大学進学を目指すがTOEFLスコアが足りない人には、堅実で最適なシステムだろう。ただし、最初に入れるレベルによっては、まずESLを修了するまでに1〜2年有することになるので、時間とお金の余裕がある人向きとも言える。
私はそのカレッジに興味ある学部があったので、進学の可能性も考えてここを選んだのだが、入ってみたらちょっと予想と違っていた。進学予備校的性質があるため、いわゆる普通のESLとはいろいろな面で違いがあった。
まず、クラスは22名の大所帯だった。その半数以上が台湾の学生で、あとは日本人6名、香港から3名。メキシコ、韓国の学生は一人もいなかった。
また、全体の2/3は下のレベルから一緒に上がってきた生徒たちで、残り1/3が、新たにテストを受けて入ってきた学生だった。台湾・香港の学生は、親が移民していて、子供をカナダの大学に進学させるべく、このESLに入れたというケースがほとんどだった。
授業内容は、文法、リーディング、英作文などに分かれているが、先生は一人。つまり小学校と同じく、一人の担任が何でも教えるのである。私のクラスは50歳くらいの男の先生だった。
レベルが上に行くに連れ、ライティングの時間が多くなるとのことだったが、それはカレッジや大学でエッセイやペーパーを書くことが多くなるので、その練習のためだった。
文法は結構集中的に勉強できたし、リーディングではテキストが「カナダの歴史」だったので、読んでいくのが楽しかった。授業は午後からで、中間に30分の休憩が入る。この時間に、みんなでカフェテリアに行くのが、一つの楽しみだった。
だが、不満な点もあった。
授業は月〜木曜日で、金曜日はアクティビティのためにとってある(実質休み)という当初の説明だったのに、実際は授業をつぶして、スケートやボーリングのアクティビティが行なわれた。授業料は、他のどこのESLより高いのに、実質授業時間は少なかった。
また、前のESLは、授業によって先生も変わるし、学部から学生アシスタントが授業やアクティビティに加わっていたので、複数のネイティブ・イングリッシュ・スピーカーに接することができたが、今回はアクティビティも担任がついてきてリードするので、実質1人と接するだけ。いろいろな人の英語に触れたかったので、先生は複数いてもいいという気がした。
ま、それは大きな問題ではないが、驚いたのは、この担任が、ターム最後の3週間に休暇を取り、代理の先生(かなり年配の女性)がきて、結局、最終テストと評価は彼女が行なうということを、突然知らされた時だった。信じられない思いだった。他の学生が言うには、教師は3週間の休みを取らなければならない(1ターム中か1年間にか、知らないが)ことになっているそうだが、だったら何もターム末に取らなくても…と思った。中間に取って、またクラスに戻り、最後は自分が全員の評価をしてタームを終了するのが、担任としての責任と思うのだが、カナダ人はそうは思わないらしい。
念のために付け加えるが、決して“家族が病気”とか“その期間にしか取れない政府のスペシャル・プログラムがある”とか、そういう理由ではない(私は最初、そういうのっぴきならない理由なのかと思っていた)。ただ単純に“休暇”だった。
そして、ターム最後の3週間を残して先生はいなくなり、以降、私たちが最終面接を終え、休みに入っても姿を見せることはなかった。それほど嫌いな先生ではなかったが、これには心底がっかりした。
もう一つがっかりしたことは、台湾の学生たちが、休み時間になると、とたんに中国語で話し出すことだった。もちろん、本来は禁止。前の学校では、日本人同士でも、いつも校内では、どんな場合も英語で通すよう、みんな努力していたので、この緊張感のなさには唖然としてしまった。下のクラスから一緒に上がってきた日本人学生によると、グループの中に彼女が一人いても、平気で中国語で話し続けているのだそう。性格的には、みんないい子ばかりなのだが、この点だけはまいった。
結局、みんな家がお金持ちで、年齢的にも若いので、「早く英語を上達させて上へ行こう」とは思わないのだ。日々の勉強をとりあえずこなしていれば、やがては大学まで到達するからである。たとえ、それに何年要しようが、授業料を払うのは親なのだから、彼らは痛くも痒くもないわけだ。
でも、性格的には、本当に素直な部分を持った人たちで、私は何人かと親しくなり、家に遊びに行ったりもした。そして、お金持ちの子供たちの驚くべき生活を知ることになるのだが、それはまた別の機会にお話しすることにしよう。
最終テストと面接にパスし、次のレベルに進めることが決まったのだが、もうこの学校で勉強を続ける気が失せていた。カナダに来てから10カ月が過ぎており、私は移民ビザを申請することを決意していたのだ。ビザが取れるまでどのくらいかかるか分からないので、まずはお金をセーブしたかった。そこで、授業料の安い私立のESLを探すことにした。
同じクラスでは、8人が最終テストをパスできず、同レベルをもう一度繰り返さなければならなかった。
なお、以上は95年に私が通っていたESLの話であり、すべての州立カレッジ系ESLがこのようなシステムをとっているわけではないことを、明記しておきたい。前にも書いたが、ESLも刻々システムを変えているので、最新情報は、メール等で直接問い合わせてみることをおすすめする。