●ESLで上級クラスに入るコツ
このタイトルを読んで「いやあ、私は自分の力相応のクラスに入れればいいから…」と引いてる方もいるかもしれない。
確かにそうなんだけど・・・
自分の力相応で、本当にちょうどいいレベルのクラスに入れればいいけど、そうでない場合はちょっとツライ。特に、少し下のレベルに入ってしまうと、いろいろ試練が待っているのダ。
その辺の話は来週にして、とりあえず今日は、なるべく上のレベルに入るコツをお教えしよう。
多くのESLは、入学時に独自のテストを行なって、生徒の現在の英語レベルをはかり、クラスを決定する。このテストは、筆記と面接を行なうところがほとんどだ。
筆記テストは逃げようがない。今の自分の英語力(この場合、文法とボキャブラリーを指す)が、かなり正直に出るはずだ。英語学習の現役生に近い人ほど、テスト慣れもしているし、高い点数を取れると思う。
私?
まあ、今までのメルマガの記事を読んでいただいたら、想像がつきますよね?
「この単語、見たことあるけど、どういう意味だったっけ〜?」と思うのが、テスト中30秒に1回くらい。かつて勉強した覚えのあるイディオムが、毎行1つ。10年前だったらすらすら解けた文法問題が、3問ごとに2つ。記憶の彼方に埋もれているものを何とか思い出そうとしているので、とても時間がかかり、問題が解ききれない・・・
テストが終わった後は、自分でだいたいの出来が分かり、このままだとヤバ!と思ったりもした。真ん中より下のクラスになってしまうかもしれないとアセった。
そこで、面接では、とにかくしゃべろうと思った。もう別のESLに通った経験があったので、会話には慣れていた。問題はきっかけだ。教師との一問一答の中から、どのタイミングで流れを自分にもってくるか、だった。
ところが、これは意外に簡単だった。
年齢より若く見える私を「若くはなさそうだ」と見抜いたのか、それとも単なるお約束の質問事項だったのか、面接担当の教師が「日本では何をしていたの?」と聞いてきたのである。
「そらきたっ!」とばかりに、私は話し始めた。ほとんどの場合、相手は私の職業---フリーランスのトラベルライター---に興味を示す。その教師も同じだった。あとは、自分からどんどん話してしまえばいい。取材で訪れた国名を並べたり、カナダに来たのも最初は取材だったことを話したり、飛行機代やホテル代は出版社が出すのでタダであちこち行けるという裏話をしたり…。そうなると、面接官は、個人的な興味でいろいろ質問をしてくるので、それにまたなるべく長く答えるようにしていた。最後には「素敵なお仕事ね。とても楽しかったわ」とまで言われてしまった。
で、結果は、いちばん上のクラスだったのである。
こんなズッコイことをしているのは私だけかと思っていたら、他にもいた。前のESLのクラスメートで、台湾から来た31歳の男性だった。
後から聞いたのだが、彼はそのESLの入学時の面接で、聞かれてもいないのに、自分のことをどんどん話し始めたのだそうだ。内容は、彼が台湾でやっていた仕事のこと。この「聞かれてもいないのに」ってのがすごいが(私より上手)、面接官は少々唖然としたものの、一応はぺらぺらしゃべれる彼に、高い点をつけてくれたらしい。
「だって俺、文法のテスト、全然ダメだから…」
なるほどね。彼も同じ作戦だったんだ。
文法テストの点は知らないが、クラスでの彼は、誰とでもよく話すし、意見もちゃんと言うし、そのうえ妙な落ち着きがあって、みんなの兄貴的な存在だった。この州立カレッジ系のESLは、1ターム中(3カ月半)クラスが変わらず、人数22人で、半数以上が台湾の学生だった。
ところで、作戦とかではなく、ごく普通に同じようなことをやっている人たちがいる。バンクーバーのESLで、アジア系の次に多いメキシカンの生徒たちだ。彼らは実によく英語がしゃべれる。母国語がスペイン語ということとラテン系の大らかな性格で、まったく物おじせずにしゃべる。
一般的に、入学のテストで、日本人は文法の成績が非常にいいが話せない、メキシカンはよく話せるが文法の筆記テストはダメ、と言われている。だからぺらぺら話せるのに、案外下のクラスに入っている子が多いのだ。
そのダメの度合いだが、本当にダメらしいのである(もちろん文法も完璧!の人もいるけど)。私の場合、いくらテストがよくなかったといっても、たぶん7割以上は取れていたので、話すほうで補って上のクラスに入れたのだ。
もしあなたが面接で「日本では何をしていたの?」と聞かれたら、とにかくどんどんしゃべることだ。この彼のように、聞かれなくても強引に話し出してしまう手もある。
話す内容は、やはり自分が長年やってきたことがいい。私は人の仕事の話を聞くのが大好きで、どんな職業の人の話でも面白く感じてしまう。一般事務でも数年以上続けている人にはプロを感じるし、業界の話が面白いこともある。会社での日常や通勤の話だって、カナダの先生には受けるかもしれない。何よりも、自分が長年やってきたことは“話しやすい”という事実が大切なのである。
どーしても仕事の話はしたくないという人は、自分が話したいことに、さりげなく方向転換をしよう。趣味のことを話したいなら、「仕事は大変だったけど、趣味の◯◯が私のストレスを解消してくれて…」と持っていき、あとはどんどん続けてしまえばいいのだ。映画や音楽の話だっていい。アメリカの人気TVドラマが日本でもだいぶ放映されているので「私、アリーが大好きで…」なんて切り出してもいいかもしれない。
自分に語りたいことがあれば、英語は後からついてくる。