●夫の里帰り(1)
クリスマスから年始にかけて、夫の実家であるスイスに行った。スイスに行くのは、父が亡くなった時(一晩だけの滞在)を含めて、もう5回目になる。しかも、毎回2週間〜1カ月も滞在しているので、もっと行っているような気分である。
彼の家はチューリヒ郊外、市の中心部までバスで10分のところだ。つまりドイツ語圏である。お察しの通り、私、スイス・ジャーマン(ドイツ語とはかなり違う)はまったくしゃべれない。昨年少しドイツ語を勉強し、また滞在中に耳で覚えたりしたので、ほんの数語は言える(「話せる」というレベルではない)が、街に出たらほとんどチンプンカンプンだ。
ところが、ありがたいことに、彼の両親は英語が話せる。おじいさん・おばあさんも話せる。バンクーバーに語学留学したことがある義妹も話せる。伯母さんたちも話せる。だから私は、彼が通訳をしなくても、直接、家族と話すことができる。
国際結婚カップルの中には、パートナーが日本語を話せない、また自分がパートナーの母語を話せないというケースが少なくない。私も後者に当たるわけだが、彼の家族と英語で話せるのは大変ラッキーだったと思う。それでも一歩外に出ると上記のような状態なので、ここに来ると、英語が不得手なのに結婚でカナダに住まなければならなくなった人たちの苦悩がよく分かる。
言葉で得しているうえに、私は彼の実家で“嫁”をしたことがない。現在、実家には両親しか住んでいないが、それぞれ仕事を持っているし、日本とはライフスタイルが違うので、“嫁”的な働きをすることは全く求められていないのだ。これはとてもラクである。ラク過ぎて、いつも朝寝坊をしてしまう。10時頃起きたこともある。やっばーと思って部屋からそーっと出ると、もう2人とも出かけていたり・・・。
さすがに気になって、彼に「朝もっと早く起きて、いろいろ手伝ったほうがいいかな?」と聞くと「そっちのほうが両親はuncomfortableだと思う」という答えが返ってきたので、これ幸い「あっそーですか」とばかりに、ラクに甘んじてしまった。日本だったら、こうはいかないだろう。
その代わりという訳ではないが、滞在中に最低2回は和食の夕食をつくって、両親にふるまう。この時は気合いを入れる。前とダブらないようにメニューも吟味する。おいしくて口にあえば、日頃の怠惰は帳消し(?)になるのだ。
今回は寄せ鍋が大好評だったが、思えば、両親とも日本の食べ物や文化に関心があるのも幸いしているのだった。私はつくづくラッキーである。
まあこうして黙認してくれているのは、日頃、バンクーバーで忙しく過ごしているのを知っているからなんだけど…。
それにしても、うちの母が、私がスイスでこんなふうに過ごしているのを聞いたら卒倒してしまうだろう。私だって嫁ぎ先が日本だったら、きっともっと違う過ごし方をしていると思う。案外、喜々として嫁的仕事をこなしているかもしれない・・・