●カルガリー事件・その後(2)
先週のカナディアン・ロッキー旅行中のこと。8月14日の夕方、私たちはバンフに着いて、B&Bに荷をおろし、お目当てのレストランに向かっていた。バンフ・アベニューを歩いていた時、ふと横を見た彼が小さく叫んだ。
「あっ、フジイ!」
驚いてその視線の先を見ると、新聞の自動販売機があり、その一面に、本当にでかでかとフジイ容疑者の写真(事件当初に使われていたもので、長男と一緒に写っている)が掲載され、「Fujii to face new charge」というタテ3cmもある大きな活字が、目に飛び込んできた。
夫のシュテファンもこの事件のことはよく知っており、目ざとく見つけてくれたわけだが、あまりの写真と活字の大きさに、私のほうがショックを受けてしまった。
この新聞は「The Calgary Sun」という大衆紙なので(「The Vancouver Sun」は一般紙なのだが)、こういうセンセーショナルな扱いは、無理もないのかもしれないが‥‥。
さっそく購入して読んでみると、明日、再び公判が開かれ、フジイ容疑者は予想されていたよりも重い罪で起訴されるだろう、というものだった。新しい事実はこの数行だけで、あとは事件の概要を振り返って伝えていた。
翌日も同じ「The Calgary Sun」紙を買った。
今度はトップページに、おもちゃで遊ぶドミニクちゃんの大きな写真と、その中に小さくジェミニちゃんの写真も載っている。タイトルは、同様の大きな文字で「Murder charges」。
記事を要約すると、この日、フジイ容疑者は第2級殺人罪に問われ、2件(ドミニクちゃんとジェミニちゃんのケースそれぞれ)で起訴されたという。フジイ容疑者は、この新しい起訴内容に、落胆の様子を見せているそうだ。
「彼女は厳しい起訴事実に直面していることを、今、はっきり悟ったのです」と、弁護士は語っている。
フジイ容疑者は精神鑑定も受けていたため、もう少し軽い罪状を期待していたのかもしれないが、現実には、第2級殺人で2件起訴という厳しい結果となった。
翌日はもうアルバータ州を離れるため、バンフ出発前に「The Calgary Sun」と「Calgary Herald」の2紙を買った。
さすがにトップページにはもう写真は出ていなかったものの、中の紙面では、両紙とも日本から来たフジイ容疑者のご両親の写真を掲載していた。お2人の憔悴しきったような表情に、改めてこの事件が発覚した時のご両親のショックと、現在おかれている苦しい状況を思い、同情を禁じ得なかった。
(以下、次号)