●カルガリーの事件
今日は、先週の「バンクーバーだより」に書いたカルガリーの事件について、現在わかっていることをお伝えしようと思う。
発覚したのが、大阪教育大附属池田小学校で児童が8人刺殺される事件が起こったのと同じ日だったので、日本では、この事件について、あまり報道されていないと聞いている。
私もその日はほとんどTVジャパンのライブのニュース(NHK)を見ていたが、その中では報道がなく、インターネットの新聞のサイトでは2紙だけがニュースを載せていた。事件のことを知ったのは、車のラジオでニュースを聞いてショックを受けた「国際結婚の会」の役員が電話をかけてきたからだ。
こちらでは、ニュースおよび新聞で報道があったが、私もくまなく見られるわけではないので、抜けていることもあるかもしれない。
CBCのニュースおよびウェブサイトが最も詳しかったので、その情報と、地元紙「The Vancouver Sun」や「The Province」の記事から訳したものが以下である。
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カルガリーで、日本人の23歳の母親が、1歳3カ月の長男をアパートに何日間も置き去りにしたまま、死なせるという事件がおきた。女性の名前はフジイ・リエ。その後の調べで、この女性は、さらに生後3カ月の長女を、毛布にくるんで2枚のプラスチック・バッグ(いわゆるスーパーなどの袋)に入れ、市内を流れるボウ川に捨てたことがかった。現在、警察のダイバーがボウ川を捜索中。
事件が発覚したのは、アパートの管理人が滞納している家賃を取りに行き、異臭に気づいたためだ。男の子は、家具がほとんどない部屋の床の上で、既に亡くなっていた。
同じアパートの住人によると、以前から子供がよく泣いており、真下の部屋に住んでいた女性は、クリスマス以降5回も警察を呼んだという。警察は2回来たが、子供のカンシャクという説明を受け、警察官も部屋の中までは調べなかったそうだ。
その泣き声も、数日前から聞こえなくなっていた。
母親は6日の夜遅く、友人に付き添われて、ひどく取り乱した様子で出頭した。この母親は、4年前に学生ビザでカナダに来たそうだ。
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長男の名前はDominic Ryu Brown、長女の名前はGemini Brown。長男は、発見される数日前に亡くなっており、現在、母親は死体遺棄の容疑で取り調べが行なわれている。長女の捜索は依然続けられているが、ボウ川の水位が高く、見通しが悪いため、難行している。
子供たちの父親は、カルガリーに住むPeter Brown(年齢は書いていない)で、父親によると、彼らの4年間の関係は4カ月前に終わっていたということだ。その後、父親は、子供たちに会わせてもらえず、母親も引っ越して、居場所を知らせないようにしていたらしい。
母親は、4年前、英語を勉強するために学生ビザでカナダに来た。ビザは少なくとも2回延長されたそうだが、1999年の8月できれていた。つまり、彼女は不法滞在だったのだ。
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母親の両親は、自分の娘に2人も子供がいたことを、まったく知らなかったそうだ。この事件のことを警察から聞かされた時、初めてその存在(ご両親にとっては孫にあたる)を知ったそうである。
お父さんは、事前に分かっていれば、なんとか力になってあげられたものを、と言っていたそうだ。
両親は、娘に、毎月2000ドルの仕送りをしていたらしい。
現在、両親はカルガリーに来ていて、娘のそばにいるという。
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CBCのウェブサイトには、母親の日記の一部が紹介されている(『』の部分)。非常に微妙なものなので、直訳調で書くと…
「捜査官たちは、今週、警察に引き渡された母親の日記を調べている。そこには、フジイがDominicを育てることの大変さを書いている、と伝えられている。
日記の書き始めの2000年9月は、Dominicを育てる喜びを書いていた。
『私がDomにママって言ってというと、彼は“マーマ!”と言った』
9月10日にはこう書いてある。
9月17日には『Dominicはいつも本当にかわいい。今日もたくさん遊んだ。Domもここで私と一緒にいることを喜んでいる』
しかし、トーンがフラストレーションに変わり、子供を持つ前にフジイが送っていたような気苦労のない生活を切望するようになった。
『私はこのつまらない暮らしが嫌だ。私は以前のような生活をすることに決めた』と彼女は書いている。」
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子供たちの父親は、カルガリー警察に別の未解決の事件で逮捕された。
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母親の弁護士は、金曜日に彼女と1時間ほど話した。彼は母親の精神状態についてはコメントしなかったが、裁判所が精神医学上の判断を求めることを期待していることを付け加えた。
カルガリーの移民局によると、母親は不法滞在だが、裁判が終わるまでは国外退去させられることはないそうだ。
母親は月曜日に法廷に立つことになっている。
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以上が、今までに私が知り得た情報である。
だいぶ概要が分かってきたが、これだけでは彼女がどうしてこういう行為に及んだのか、まだはっきりつかめない。夫がどんな人物だったのかも分からないし…。
ただただ気の毒なのは、孫の存在をまったく知らなかったご両親だ。娘は一生懸命、勉強していると信じて、仕送りを続けていただろうに…。
このニュースは、バンクーバーの日系社会にも衝撃を与えている。特にここはカルガリーより国際結婚カップルが多いので、バンクーバーでも起こり得た事件だったからだ。そういったことを未然に防ぐために、悩みを聞いて相談にのったり、お互いに助け合えるネットワークをつくっていくことを、国際結婚の会は目標にしている。
この後のニュースは、まだ入ってこない。また新たな事実がわかったら、ページ上でお伝えします。