●金銭感覚の違い(2) <国際結婚ワークショップより>
6月26日(火)に行なわれた第21回 国際結婚ワークショップ(主催:グレーターバンクーバー 国際結婚の会)のテーマは「金銭感覚の違い」だった。日本人とカナダ人の一般的なお金の使い方・蓄え方の違いとともに、各家庭ではどのように家計がやりくりされているのかに関心が集まった。やはり日本とカナダでは、微妙な違いがあるようだ。
現代の若いカップルもそうなのか知らないが、日本では、給料袋(現在はほとんど「給料明細」だけど)は封を切らずにそのまま奥さんの手に…、というのが一般的だった。それは、家計を含めて家のことを切り盛りするのが、妻の役割だったからだろう。その給料を稼いできた夫は、妻から毎月のおこづかいをもらうのである。
個人的な気持ちを言えば、ちょっと気の毒な気がしてしまう。自分が一生懸命働いたお金なんだもの、もっと自由に使わせてあげたいと思ってしまうのだ(理想論なのは分かっております、はい)。また、妻としても、何か自分が欲しいものがある時に、夫に気がねしないで買えるくらいの独立した経済力は持っていたい。そういう思いがどこかにあって、私は一生続けられる仕事(会社を辞めたらそれで終わり、ではなく)を、無意識のうちに求めていたような気がする。
さて、話を戻して‥‥
日本の共働き夫婦の場合、夫の給料から家賃やローン、光熱費、食費など、現在の生活のための費用をまかない、妻の給料を貯蓄にあてるケースが多い。そうやってせっせと貯金をしておき、出産・子育てで妻の収入がなくなってもあわてないよう、また将来の子供の教育費などのための準備をしておくのである。つまり、ダブル・インカムがあっても、支出面の割り振りの仕方を考えれば、家庭のお財布は1つ(シングル・ウォレット)と言える。
それに対し、ワークショップで聞かれた話では、共働きのカップルは、食費や必要経費をそれぞれから同額ずつ出しあうという人が多かった。こちらは、基本的には夫婦それぞれのお財布があり(ダブル・ウォレット)、生活経費は折半というやり方である。
ただ、夫のほうが収入が多いのに、出すのは同額というカップルもいて、やはり不公平感を抱いているようだった。そりゃあ無理もないと思う。
そのうえ、妻のほうは、ヘアカットを我慢したりしてお金をセーブしているのに、夫はそんな状況をまったく分かっていない場合もある。
聞いていて思ったのだが、このコーナーの初期の記事(7回、8回あたり)に書いたように、それぞれの文化でコミュニケーションの方法が違うので、夫にはやはり家計のことも不公平感のことも、はっきり言わなければ分からないのだと思う。
察することができる日本人の夫は、たとえば今月、妻が風邪をひいてパートを1週間休んだら、その分パート代が少なくなることは容易に想像できる。別にわざわざ言わなくても、当然のごとく分かってくれている。
ところが、おそらくカナダ人の夫は、「今月はパートを1週間休んだから、◯ドル×5日=◯◯ドル分、いつもより収入が少ないの。だから大変なの(←ここまで言わないと駄目)。だから今月はいつもより多く生活費を出してくれない?(←さらにここまで言わないと駄目)」とハッキリ何をしてほしいのかを言葉にしないと、こちらの状況を理解できないのだろうと思う。相手は、そういう文化の中で育ってきているのだから。
面倒と言えば面倒だけど、単純と言えば単純だ。思っていることをそのまま言えばいいのである。むしろストレートに言ったほうが、この文化の相手には通じやすい。
言ってみて、渋い顔をするような人だったら、それは金銭感覚の違いや文化の違い以前の問題‥‥かもしれない。