●食べ物について(3)
夫婦だけの時は、現地の食べ物に適応する生活をしていても、子供が生まれると、なるべく日本食も食べさせていきたいと考えるお母さんは多いようだ。とりわけ、季節の行事に結び付いたお料理は、日本の文化を伝える大切な役割も兼ねているので、日本にいた時には作ったことがなかったのに、海外で初挑戦している方も少なくない。
たしかに海外に住んでいると、日本の年中行事やそれに伴う味、あるいは季節感あふれる食材や料理が、日本にいる時以上に気になることがある。
年中行事なら、お正月のお雑煮やおせち料理、節分の豆、雛祭りのちらし寿司や桜餅、子供の日の柏餅、お彼岸のおはぎ、お月見のおだんご、大晦日の年越しそばなど。季節の味といえば、春のタケノコや菜の花、夏のそうめん、秋の栗ご飯や松茸ご飯、冬の鍋料理などなど。
おそらく多くの日本人の季節感は、これらの味と密接に結び付いているのだと思う。私もその一人。カナダの中でも温暖なバンクーバーは、四季があって日本と少し似ているので、新しい季節が巡ってくると、よけいにその味を思い出してしまう。
日本にいれば、こういった年中行事や季節の味は、スーパーに行けば簡単に手に入るが、海外ではそうはいかない。自分で作ろうにも、食材がないこともある。だから、海外に住んでいるお母さんたちは、足りない食材を、何かその土地の物で代用するという工夫を、みなさん、しているのだ。
地元の日本人会や子供が通う日本語学校では、季節の行事にちなんだイベントを行ない、お料理がふるまわれることもある。個人ではなかなか作れない場合でも、こういったイベントに参加すれば、子供たちにその雰囲気だけでも伝えていくことができる。
さて、こういった日本の年中行事や食べ物について、パートナーの反応はいかがだろう?
これはもう、本当にさまざまである。
行事の背景にある文化的・歴史的な意味にまで興味を示す人(かなりの日本びいき)、クリスマスやサンクスギビング・デーのような感覚で受け入れる人、料理はOKの人、料理もダメな人・・・。
食文化を継承していくにも、やはりパートナーの協力は必要なのである。